円形焦点

逆張りし続けるとこうなる

29歳11ヶ月、この間5年付き合った婚約者と破談になった男が旅をした結果④

長崎、伊王島で見知らぬ家に泊めていただき、愛を沢山受け取った。

突然のイベントに困惑したけど、大きな幸せと勢いを胸につめこんだような心持ちだった。

12月3日の朝、そうして俺は長崎から佐賀を抜けて阿蘇の山をみて、雄大さに感激しながら鹿児島へ向かった。

 

途中、聖地巡礼も果たした。これはインターネットの一部の人しか分からないところだとおもうけど、みんな行きたいところだとも思う。f:id:aqandme:20221208130155j:image

こんなアホさもよいスパイスだった。

 

12月4日、熊本の水俣を抜け、鹿児島の道の駅で目覚めた俺は一直線にに知覧へ向かった。

あと数時間で12月5日の誕生日になってしまうので、今日中には大分の別府で温泉に入って日本全国到覇だぜ!と息巻いていたからだ。

 

知覧では、年端も行かぬ子どもたちの決死の覚悟と母への手紙をみて号泣してしまった。

祖父の兄弟が2人、特攻隊だったから、無関係な話とは思えなかった。

 

宮崎へ抜け、いつもどおり高速道路を使わず峠道や下道で地鶏を食べたりして進んでいった。

生の鶏肉、うまい。

 

12月4日の23時45分、ギリギリに大分の温泉施設に到着。

深夜までやってるスパ銭みたいな温泉施設で、ほとんど貸し切り状態だった。

 

20代の振り返りをして、今回の旅は結局広島のコンカフェ嬢と出会えてなかったらこんなに様々な出会いは起きていなかったと思った。

29歳の最後の半年、地獄のような時間だったけど最高の旅で俺の人生は一変したとすら思ってた。

 

12月5日 30になった俺はあいかわらず道の駅で車中泊をして夜を明かした。

ただの乗用車のシートを倒しただけ、目隠しやシェードなども一つもなく、本当にちょっと横になるだけど車中泊でこんなところまでこれるとは思わなかった。

その頃には気温もだいぶ下がっていて、練れても5時間程度、あとは寒くて起きてしまうので行動をするようになっていた。

 

誕生日の朝、別府の鉱泥温泉という珍しい温泉に入ることにした。

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オープンまで少しだけ待って、無事入浴すると神戸からきたというお兄さんと意気投合してなんとハッピーバースデーまで歌ってくれた。

こんなに幸せなことはないと思った。

 

別府といえば地獄めぐりだろ、と温泉ツウの友だちに言われて地獄めぐりをした。

少し寒かったけど、久しぶりにゆっくり観光できて、日本全国行ったことない都道府県はなくなったぜ!わっはっは!とか思ってた。

 

夢幻の里という秘湯温泉にも入った。

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完全に貸切状態で最高の誕生日だった。

羽生結弦も入ったらしい、ゆづくん汁ですね。

 

温泉からあがって、さてどうしようかと情報収集を始めた。

とりあえず福岡に戻ろう、と由布岳を抜けていくが、やはり睡眠不足で途中で3時間ほど仮眠をした。

目が覚めて時刻は18時半、寝ぼけてInstagramを眺めていると広島のコンカフェのシフトが投稿されていて、この間行ったときの2人が出勤だった。

 

誕生日だし、これもめぐり合わせだと強く思った。

あの場所に行ってなかったらこんなに大冒険できていなかったから、どうしてもお礼を言いたかった。

 

お礼は言いたいけど、大分から広島は流石に遠すぎる。いけたら行こうと思ってたら悠長に大分から福岡まで山を超える。

福岡についたのは21時半。どうせなら路上ミュージシャンにもお礼が言いたくていた場所に行ってみたけど、いなかった。

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またいつかどこかで会えたらいいな。

 

もういっそ広島へ帰ろう!と決め、普段は乗らない高速道路を時速140キロのスピードで北上していく。(山口は帰路もスルー!今回はご縁がなかったということで)

 

東北では見かけない荷台連結の25mトラックや、みかけぬ地名に旅を感じながら、眠い目をこすりながら広島へ猪突猛進していた。

 

ただお礼が言いたいだけだった。

 

ようやくついた。時間は12月5日の26時半

ちょうど日本対クロアチアのPKが始まったあたりの時間だった。

日本一周して帰ってきたよ〜とだけ軽く話して、皆に倣ってサッカーを眺めていた。

 

コンカフェは朝4時まであいており、完全にスポーツバーの様相だった。

おいおいこりゃアウェーだぜなんて思いながらPKを見ていたが、敗北する日本にお店は意気消沈。

少しづつ他のお客たちは帰宅していき、いつの間にか一人になっていた。

 

誕生日でめぐり合わせだと思ったから大分からぶっ飛ばしてきたこと、この店が起点になって様々な出会いがあったことを伝えて、お土産のとおりもんを渡した。急だったからこれしかなかった。

 

キャストもいつの間にかいなくなり、俺とあの子二人で話し込んでいた。

じっと目を見つめて話をしてくる子で、感性やスタンスがなにかこう、自分と似たものを強く感じる人だった。

旅をするきっかけのことや、旅の最中のこと、その子の話を少しだけ話してくれて、俺は生まれてはじめてその子の性格や人柄、魂の部分に強く人に惹かれていた。

 

しばらくすると他のキャストが帰ってきた。

近くの姉妹店にいってたのかな〜なんて思ってたら、コンビニでケーキを買ってきてくれてあた。

みんなで歌って祝ってくれた。

 

これで3万とかとられても文句は言えないとも思ったし、こんなことされるために帰って来たんじゃないのに!とか色々考えちゃった。

 

嬉しかった。去年は婚約者は何もしてくれなくて、一人で仕事終わりに業務スーパーでケーキの材料を適当に揃えて不器用なホールケーキを自分で作っただけだった。

猫には猫用ケーキ買ってくるくせに!

 

この喜びは伝えきれない。本当に本当に嬉しかった。

 

俺は、俺自身がコンカフェという女の子のお店にハマっているのか、それともその子に惚れ込んだのかがわからない。

多分、恋破れたおっさんがコンカフェにハマった、それだけのことにも見える。

 

でも間違いなくその子のおかげで一生忘れられない旅になった。

 

名残惜しくも、4時になり、退店、急かされる前に自分からすぐに店を出ていった。

あのままダラダラいることもできたと思う、完全に友達のノリで話していたし、たぶん。

 

翌日12月6日、あの子が言った「神様連れて帰ってきた?」の言葉が妙に気になって、出雲大社に行くことにした。

実のところ、完全に島根・鳥取を取り逃していた。

 

愛国心がつよいわけじゃないが、神話は興味がある。

ましてやこんな運命的な旅をしちゃったもんだから、なおさら行くべきだと思った。

 

オオクニヌシノオオカミは、海に沈む太陽を見て神託を受けたんだと思った。 

そういう銅像があったし。


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神話と現実は延長線上にあるんだと、強く思ったし、俺もそんな経験をしてみたいと思った。

十分凄い旅立ったけど、神秘的とはまた違った経験だったから。

 

出雲大社を出て、鳥取砂丘へ向かう。

20代の頃、付き合っていた女の子と現実社会が嫌になったときは鳥取砂丘に行こう!と話のネタにしていたけど、結局一度も行くことはなかった。

あのとき鳥取砂丘に行こうね、と話した女の子達はみんな今では結婚して、子供までいる。

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30歳になって、ようやくこれて、いつもだったらめんどくさがってあるき回らないけど、やっと来たんだから!夢が一個かなったんだぞ!と自分に言い聞かせて、鳥取砂丘の一番高い丘にむかってあるき始めた。

 

この数年で運動不足になった俺ははあはあしながら急斜面を降り、崩れる山を登っていく。

遠くに人がいて、どうやらもっと観光向けの入り口があったことに気づく。

海岸線を見るために砂丘を抜けていき、ようやく見えた頃には小さな雹が降ってきていて、遠くの海にはその親玉みたいな雲が海へと雹をぶちまけている姿が見えた。

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北には怪しく青い雲と空、南の出雲方面には夕陽が沈んでいっていた。

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なんだかその景色が美しくて、出雲のオオクニヌシノオオカミの話を重ねて神話の世界に入った気分だった。

 

雹が少しづつ強くなり始め、ようやく一番高い丘に着いた。

どうせならあの雲をすこし避けてくれないかと少し文句を言ってみた。

なんだかあの海に降り注ぐ雲の影が、出雲から旅立つ神のような姿に見えたから、冗談めいて、ちょっと神様に近づいた気分だった。

 

出雲へと沈む夕陽も雲から顔を出して、雹もすこし弱くなってくれて、なんだかこの旅のゴールで、これからの人生のスタートのような、そんな景色だと思った。

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太陽が顔を出したからオオクニヌシの真似して直視してたら目が少し眩んだ。

 

いい景色を見れてよかった、と振り返ると、嘘みたいな大きな虹が二重に架かっていた。

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降り注ぐ雹の影がまるでオーロラみたいで、夕陽が照らす夢の鳥取砂丘

俺はこれが現実には思えなくて、一人でボロボロ泣いてしまった。

やっとゴールして、やっとスタートした。

ぜひその景色も見てほしい。

 

 

本当に凄い旅をしてきた。

出雲大社鳥取砂丘に行くことだって、あの子に会いに行かなかったらまた今度にしていたと思う。

俺にとってあの子は人生の重要な人間の一人で、尊敬や憧れすらある。

なにか心が通じ合ったような、話しているとかけたパーツを見つけたような感覚に陥る。

 

何度も言うけど、俺は恋破れてコンカフェにハマるおっさんとほぼ同一だと思う。

でも、全く違う。

なにかのこの度の運命の糸を手繰り寄せていたら、そこにいた人だった。

俺にとっては本当に神様のような人で、あの子が12月5日の深夜に少しだけ言った弱音は、人生をかけてでも解決してやりたいと思う。

恋愛とかそういう話ではなくて、人間として、自然に感謝するのと同じ価値がある。

 

あるいはシンプルにタイプの女の子に鼻の下を伸ばしているだけかも。

また会いに行きます。